奥秩父・釜ノ沢

  • 2020年6月7日

奥秩父の東沢にある釜ノ沢の記録です。
沢登りで人気の沢で、山梨県を流れる笛吹川の上流部で、名峰甲武信ヶ岳に突き上げます。この沢は、乙女ノ滝・魚留ノ滝・千畳のナメ・両門ノ滝など、見どころの滝やナメが多く、特に千畳のナメは一度は歩いてみたい憧れの場所でした。
今回は、大学時代の友人と1泊2日テント泊での沢登りになります。

沢行記

日時:2007/10/6(土)~2007/10/7(日) 前夜発1泊2日
経路:西沢渓谷駐車場~東沢~乙女ノ滝~魚留ノ滝~両門ノ滝~甲武信ヶ岳~徳ちゃん新道~西沢渓谷駐車場
天気:晴れ

1日目

車止めから30分位のところにある、田部重治文学碑(大正から昭和にかけて活躍した登山家)。

吊り橋を渡ります。天気が良く、谷の向こうに鶏冠山(2,115m)が見えます。ここから笛吹川は東沢と西沢に分岐し、今回は東沢沿いに進みます。

ホラノ貝ゴルジュの入口。青白い水とのコントラストが印象的。
今回は川沿いにある登山道を通過しました。水線通しで泳いで突破することも可能ですが、難易度は高いです。
いつか挑戦したいと思いながら、いまだ果たせていません。

50m乙女ノ滝。右岸より乙女沢が滝の形で出会います。

東沢は青白い水とスラブが印象的です。
※スラブ:表面に凹凸がなく一枚岩でなめらかな

西のナメ沢。この沢も滝(30m)で東沢と出会います。

信州谷・金山沢に入ってしまい折り返します。

12m魚留ノ滝。この滝も有名です。

この滝は流木とスラブの段差を手掛かりに、そんなに難しくなく登れます。

滝上は明るい、スラブの両岸となっています。

綺麗なウォータースポット。自然の造形美です。

千畳のナメ。一番の楽しみにしていたところです。
傾斜の緩やかなスラブの上を水が多い尽くすように流れ、これが50~60m続きます。曇り始めてましたが、晴天だったら水の反射と木々の緑が映え、もっと綺麗だったと思います。

しばらく歩いていると、晴天になってきました。

30m両門ノ滝。西俣と東俣が30mのスラブ滝で出会う、広い釜を持った滝です。
西俣東俣共に滝上部が見えませんが、これは見事です。

釜。水の透明度もいい感じです。

東俣の右壁のルートを探ります。

両門ノ滝を突破後は、しばらく歩き、1,771m地点の平らな場所を幕場とします。張ったツェルトに光が集まり、ランタンの様になっている不思議な光景。

衣類を干します。沢は濡れることを前提としていますが、翌朝着るのが冷たく、気持ち悪いんですよね。すぐ慣れますが…

薪が豊富で、盛大な焚火が出来ました。いい幕場です。

幕場でマッタリとくつろぎながら、夕食の準備をします。
今回は友人がすべて準備してくれました。

ピラフと大量のソーセージが入ったボルシチ。私は単独行の時は、最小限のメニューと量しか食べませんが、この友人と行くと毎回食材を大量に持ち込んでくれます。はちきれん程、お腹がいっぱいになります。

お酒を飲みながらの焚火は至福の瞬間です。
ちなみに、沢での幕場選びは下記の3要素を満たしているかどうかで決めます。すべてを満たしているというのはほとんどなく、最終的には優先順位とバランスで決めます。

  • 増水時に備え、水面から少し高いところにある平らな場所
  • 近くに水確保ができる、支沢があること。
  • 薪があること

2日目

翌日、簡単に食事を済ませ、撤収します。
この幕場には、別パーティーが1組いて、テントで就寝中に引きずり出されそうになったとオカルト的なことを言っていました。

沢を詰め上がります。傾斜も増し、前日の疲れも引きずり、結構しんどかったです。

幕場が同じだった別パーティーと抜きつつ抜かれつつ進みます。こう見ると、結構な傾斜を登っていることがわかります。

水師沢手前。ここまで来ると、大分水量も少なくなっています。

木賊沢手前。倒木が多くなり、詰めもいよいよ大詰めです。

が、ルートを誤り、懸垂下降を一本します。

そして、この後、私に悲劇が起こります。この懸垂下降後に、ザイル回収をして、ザイル末端をピッと手繰り寄せたら、その末端が足元にあるカメラにあたり、カメラが滝壺まで落下してしまいました。

友人に待機してもらい、滝壺まで降りて、カメラを見つけることができましたが、完全破損。電源も入りません。山だからこういうこともあるよな、とそんなにショックは受けませんでしたが、これから待ち受ける風景写真を取れない残念さの方が強かったです。ま、これからの風景は友人のカメラに託すことにしよう。一方で、友人は私がこの急傾斜の滝壺に降りていくことに、「気をつけろ」と妙に心配してくれたことが、妙に記憶に残っています。

そんなこんなで、ついに甲武信ヶ岳に詰め上がりました。

ガスもなく、山頂の景色は絶景で、富士山も望めました。三宝山や十文字方面の景色も、心に沁みついています。
帰路は、急な「徳ちゃん新道」を下り、無事車止めまで戻りました。

麓に降りてからは、事前に予約しておいた「ほうとう」が美味しい塩山のお店で夕食を取り、帰宅しました。

総評

私の場合、これまで釣りでの岩魚が目的だったこともあり、笛吹沢水系にはあまり気持ちが行っていませんでした。荒川水系と比べると、アクセスがしやすく、スラブ系の谷が多い為、どうしても釣り場としての魅力が薄れる為です。しかし、純粋に沢登りとして考えた場合、スラブ中心のとても魅力的な水系であることを知ることができました。特に、東沢流域は、ホラノ貝ゴルジュ・鶏冠沢・東のナメ沢・西のナメ沢など、情熱を傾けるべき沢が多いです。

また、特徴的な白みがかった青い水質は、山の岩質と含まれるミネラル分がが関係しています。沢をやっていると、白い沢、青い沢、赤い沢、黄色い沢があることを知ります。なぜなのか?不思議で調べたことがあるのですが、これはまた別記事にしたいと思います。