奥秩父・井戸沢

  • 2020年4月5日

 今回は、沢一本目ということで、思入れのある奥秩父・井戸沢を選びました。

 自分は、元々渓流釣りが好きで、その景色や岩魚に魅せられ、どんどん源流指向になって行きました。沢登りもやりますが、あくまでも釣りがメインです。
というか、釣りをしていて魅力的な沢の場合、沢登りも別途行う感じです。

 私は沢に行った後、記録を残すようにしていたので、当時の記録を載せていきます。


 奥秩父の大洞川水系の本流筋の沢で、奥秩父最悪と言われています。2005年に4回も通った奥秩父の名渓で、釣りには満足していたのですが、遡行的にいつも中途半端に終わってしまっていました。井戸沢で一番美しいと言われる、前新左ェ門窪~奥新左ェ門窪までの工程を踏めなかったからです。今年はここを含めた完全遡行を一つの目標としていました。

 体力限界ギリギリの遡行で、出迎える景色が素晴らしく、そして綺麗な岩魚と出会うことができ、これこそまさに源流釣りの醍醐味というのでしょう。求めるすべてが今回の山釣りにありました。

【釣行記】

日時:2006/6/3(土)~6/5(月) 前夜発2泊3日(テント泊)
経路:荒沢橋~惣小屋沢出会い(杣道)~山の神~栂ノ沢分岐(井戸沢入渓)~椹谷分岐~前新座ェ門窪~奥新座ェ門窪~東仙波~ラクダの背~笹のコリドール~山の神~荒沢橋
天気:4~6日晴時々曇り
水温 13~15℃  
釣法:餌釣り(ブドウ虫)

【2006/6/3(土)】

3:00 自宅発
 1:00出発する予定が、前日の仕事の疲れが抜けず遅れて出発

6:30 荒沢谷ゲート着
 準備

7:00 荒沢谷ゲート発
 車3台駐車。荒沢谷&大洞川本流の釣師か?

7:40 惣小屋沢通過
 水量まずまず。

7:40 恐竜の背通過
 相変わらずここまでの急勾配は辛いが、これまでのテント泊の装備と比ると大分楽、日帰り装備と同じペースをキープ。

9:00 鹿の楽園通過

 ほぼ予定通り

9:15 山ノ神通過
 栂ノ沢へ至る新ルート発見!
 これまで、1,200m稜線を辿っていたが、1,100m稜線の踏み跡あり。
 (20分ほど短縮でき、こっちの方が迷いにくい)

10:30 栂ノ沢分岐着

 相変わらずここに着くと、ホッとすると同時に、俄然やる気と元気がみなぎる。今回は奥まで詰めるのをひとつの目標にしているので、これまで大物が釣れたポイントもしくは、数が出たポイントを拾い釣りして進む(でも、小さいのが数匹釣れただけ)。

 椹谷出会い

14:30 15m2段滝着

 これまでの最高到達点&良ポイント到着!最高で26cm止まり。

15:15 15m2段滝発
 この15m2段滝の高巻きを越えられるか?というのか釣行前の懸案だったのですが、やはり難しかった。高巻いた先のルンゼを下ったが、15m滝の滝壷に落ちていた為、再度急勾配のルンゼをザイル確保しながら登り、もう一つ先のルンゼを降りたら滝を越えられました。
 つまり、相当大きく高巻かないといけないルートだったのです。
ここで、激しく体力消耗。晩飯も確保できたし、時間的にも厳しいので竿を出さずに先を急ぐ。

18:00 前新座ェ門窪着

 暗くなってきたので、急いでビバークの準備をする。

 暗くなる前に一投したら、目の前の釜でいきなり良方ヒット。
 あまりにも美しい秩父岩魚にしばし見とれる。

18:45 料理&焚き火開始

 美しい沢で、おいしい魚を食べながら、焚き火を見つめる。非常に満ち足りた時間だったけど、荷物軽量化の為お酒を持ってこなかったのが悔やまれる。

20:30 消燈

【2006/6/4(日)】

5:30 起床
 撤収

6:00 釣り開始
 先日釣れた目の前の釜に竿を出す。いきなり釣れる。「う~ん、やるなぁ、井戸沢源流!」とほくそえむ。時間的制約もあるので、滝壷に絞って釣り上がるようにする。

8:00 調和の取れた美しすぎる小滝&釜

 ここも数が出ました。でも、尺は出ず。

10:00 連爆帯の入り口

 すだれ上の滝

 6m2条滝

 ここから先も、綺麗で確実に釣れるであろう滝がいくつか出現。本当に帰れなくなるので、ここから先は竿をあまり出さないよう自制。

11:30 奥新座ェ門窪到着

 ついに、念願の奥新座ェ門窪到着!休憩&魚の腸出し。

12:00 奥新座ェ門窪到発

12:10 奥新座ェ門窪右俣通過
 ゴルジュの先に20m滝が出現。手前のルンゼから高巻こうとしたが、これが裏目に出た。

12:50 沢に下りるルートが全くなく、一気に稜線まで出ることを決意。
 しかし、なんと恐怖の熊笹の薮こぎ!(時間の割に全然距離を稼げず、精神的に辛かった)。

14:30 ロック・クライミング
 もともと道のないところでの稜線登りなので、東仙波に行くためにはここを通るしかない。実際、ボルダリングのジムに通っている立場からすれば、大して
難しくないのだが、自然のスケールの厳しさに圧倒されながら、先日の疲れや単独行の不安感を含めると、ものすごく緊張する。慎重に、丁寧に登る。

15:30 ようやく緩やかな稜線になる。
 ものすげー、景色がよく、気持ちいい。

16:00 東仙波到着


 山頂の景色は久しぶり。ボーイスカウト時代を思い出す。これはこれで、確かに気持ちいいかも。

17:00 らくだの背のところでルートを間違う。
 獣道(鹿)のルートが無数にあり、マメに現在地を確認しないと迷いやすい。タイムロス&焦りだす。

18:00 笹のコリドール通過
 ここら変になると、地元山岳会のナタ目があり、迷うことはなくなる。

19:00 BP着
 車止めまであと2時間半の工程だが、暗い中疲れている体で惰性で進むのは危険と判断し、予備日の3日目を使うことに決め、ビバークする。

【2006/6/5(月)】

4:00 起床
 撤収

4:30 BP発
 疲れが溜まっていて、すぐ足取りが重くなる。

7:00 車止め着    

7:30 車止め初
 荒川村近辺をぐるぐる回り、温泉探しをする。今後の為に、いい感じにしなびた、しみじみ温泉をいくつかチェック。

10:00 荒川村「そば道場」着
 これまで味わった中で一番おいしいと思っている蕎麦屋。蕎麦&天ぷらを堪能

11:00 横瀬町「武甲温泉」着
 温泉で親父連中の井戸端会議に巻き込まれ、ニュースで話題の母子殺害事件の話題に強制参加させられる。でも、僕なりの意見をしっかり主張してくる。

12:00 「武甲温泉」発

16:00 自宅着

【総評】

 色々な感動でいっぱいですが、まず、埼玉県である奥秩父にまだこういう場所があるということに感慨深く思います。
 釣れる岩魚は、鰭が赤に近いオレンジで、体色が真っ黄色で、赤い斑点が際立つ、いまや貴重種であるネイティブな秩父岩魚なのです。滝川源流の水晶谷の岩魚は、鰭の赤さは井戸沢以上でしたが、体色や日光岩魚特有の赤い斑点は奥多摩の大雲取谷や唐松谷に近いもので、これらの岩魚と比べると、井戸沢の岩魚は品格が違います。

 未踏の地でもある前新ェ門窪以降でも水量は衰えることなく、水はますます澄み渡り、素晴らしい景色は続き、岩魚はどこまでも生息し…(前回遡行の水晶谷と違い)谷や森がしっかりとしていて、保水力があり、森林伐採&自然破壊のない証です。

 また、井戸沢は5度目ですが、入渓してから出渓するまで、人とすれ違ったことは一度もありません(去年GWに行っても人と出くわしていない)。それだけ、アプローチが悪く、険しく困難な谷なのでしょう。でも、僕にとっては、行く度に新しい何かがある、本当に素晴らしい谷です。

 今年は、装備面でも気を使いました。去年のテント泊時の荷物の重さによる体力の消耗を反省点としてあげ、荷物の軽量化を課題としていました。
①食料→すべてフリーズドライ
②テント→ツェルト
③ザイル・ナイロン8mm・40m→ケブラー5.5mm・30m
④鉈&ノコギリ持たない
⑤衣服→薄手でコンパクトになり保温性のあるもの
⑥渓中1回しか使わないようなもので、工夫次第で代用の聞くものはとにかく持たないようにする
 これにより、18kg→11kgに成功しました。ザックも60Lを40Lで収まるようにしました。(ハーケン・ハンマー等の登攀用具を除けば、更に1kg減らせますが、単独行では、最悪の状況を考え安全確保上さすがに削れませんでした。)