ガス・カートリッジ考察

 今回はアウトドア・ストーブのガス・カートリッジについて、深掘りして行きたいと思います。

 ガス・バーナーを製造しているメーカーは、ガス・カートリッジも製造していて、同一メーカーの組み合わせ以外では使用を禁止しています。燃焼器具だから当然かもしれませんですが、実際には共通規格の為に使えてしまいます。ショップに同一メーカーの在庫がなかったりした場合、参考になると思います。が、あくまでも自己責任の元、使用判断をお願いいたします。

 さて、各メーカーのガス缶は何が違うかというと、ズバリ「ラベル・価格・成分」になります。実用上のケースとして、「成分・容量・価格」の観点で説明して行きたいと思います。

【ガスの成分】

 ガス・ストーブの弱点として、雪山のような低温下では、バルブを最大にひねっても火力が出ない点があります。これは外気温が低いと、ガス缶内の圧力が低下して、ガスが噴き出しにくくなるためです。

 この為、ガス缶は通常用と寒冷地用の2種類が販売されています。メーカーによっては更に超寒冷地用なども用意していたりします。

EPI:パワープラス[寒冷地用](左)、エクスペディション[超寒冷地用](右)
同一メーカー、同一サイズでガス成分の異なる写真例

 では、この通常用と寒冷地用の違いは何かというと、ガス(ブタン、イソブタン、プロパン)の成分混合率です。この3つのガスの中で、プロパンが一番沸点が低い(低温下で圧力を保持しやすい)ので、プロパンの混合率が高いほど、低温下での出力が安定します。

 ガスの沸点は、ブタン(-0.50℃)・イソブタン(-11.70℃)・プロパン(-42.09℃)です。仮にブタン100%だった場合、雪が降る状況だと、ガスが気化せずに全く使えないことがわかります。3000m級高山だと、夏でも最低気温は10℃以下になることを考えると、通常用を持つのは危険と分かります。

 各メーカーの成分はこんな感じで、メーカー毎のカテゴリ内で下に行くほど、低温に強い仕様になっています。

 低温指数と低温評価は、成分比率を元に自分が適当に算出したものですが、メーカーの製品特性と一致していることがわかります。また、具体的に数値で見ると色々と見えてくるものがあります。例えば、EPIのエクスペディションが最強であること。スノーピークのイソプロは他メーカーの最強モデルに匹敵すること…
 他メーカー(コールマン・SOTO・キャプテンスタッグなど)も色々とガス・カートリッジを出しているので、評価&比較すると面白いかもしれません。

 夏の海とかなら通常用(ブタンのみ)の製品でも良いですが、山での利用を前提とする場合、夏でも冷えるし他シーズンの利用を考えると、プロパン比率が高いのを選ぶのが賢明です。(逆に真夏の海でプロパン高いのは少し怖い)
 成分→性能と考えて良いと思います。

【容量】

 容量については、各メーカー大(約500g)・中(約250g)を用意している場合が多いです。小(約120g)を用意しているメーカーもあります。なお、缶のサイズはほぼ同じですが、入っているガス量はメーカーやモデルによって前後します。

EPIパワープラス:大(500g)・中(230g)・小(110g)

 私は山行計画時に、火を使う量により、使い分けています。では、どうやって使用量を見積もるのかというと、以下のような感じです。

[1]基準値
中(250g)缶だと火力最大にした状態で1時間位燃焼します(出力2,500kcalと仮定)。また、水1リットルは最大火力で3分くらいで沸きます。
250g/60分×3分→1リットルの水を沸かすのに12.5g使うことになり、これを押さえておきます。

[2]見積り
1食でインスタントラーメン・コーヒー・焼きベーコンを作ろうとした場合、700g水を沸騰させると仮定し、12.5g×0.7→8.75g。
そして焼ベーコンはざっくりその半分位で使用量5gとすると、1食で約14g使用することになります。
 そう考えると一番小さい120g缶でも、この料理なら8食分も使えることになります。実際には、作る料理と緊急時の予備も考慮し、多すぎず、少なすぎず選ぶようにしています。
 単独1泊2日なら、120g缶で十分足りることがわかります。メニューによっては、2泊3日も可能です。

【価格】

 そんなに大きく変わらないので、ここでは細かく書きませんが、下記のようにAmazon価格等でコスパ計算して利用すると最適化できると思います。

 上段250g缶、下段500g缶のリストです。こうすると、やはり大容量缶のほうがコスパがいいのがわかります。また、低温指数を見ると、EPIパワープラスが良いこともわかります。

 ちなみに、グレー網掛は私はレギュラー缶を使わない為、塗りつぶしています。イエロー網掛けは、単価上位を色付けした結果になります。

 ガス・カートリッジも掘り下げると中々奥が深いです。参考にしていただければと思います。