GARMINとスマホのGPS性能比較

前回、iPhoneを使ったスーパー地形によるGPSログの使い方の記事を書きました。

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これまで登山の記録にGARMIN社eTrexを使用してきましたが、スマホアプリのスーパー地形がとても良くできているので、GARMINの代替たりえるか?両者の検証を行いました。

GWに行った奥多摩・小雲取山の沢登りでテストしています。

比較対象機器

 

Apple iPhone 8
アプリはスーパー地形を使います。

 

GARMIN eTrexh

2007年位に購入したもので、いまだに使っています。最初は”h”なしのeTrexを使っていましたが、高感度チップを搭載したこのモデルは沢でもガンガン位置情報を拾ってくれます。自分にとっての必須ツールで、既に使い始めて15年近く経過しています。

比較項目

上記機種を使って、以下の項目の比較&評価を行なっていきたいと思います。

  • GPS電波感度
  • GPS位置精度
  • 操作性
  • バッテリー持ち
  • 評価

GPS電波感度

GPS受信機は、地球表面上を周回している24個のGPS衛星より電波を受診します。そして、このうち最低3〜4つの衛星から電波を受信できないと、位置情報を取得できません

尾根歩きのように頭上が開けている状況では、より多くの衛星からより強い電波を受信できますが、沢や谷(特にゴルジュ帯)では、周囲が岸壁や木々に囲まれている為、電波の数や受信強度が弱くなりがちです。この為、位置情報が細切れにならないようにする為には、受信感度が重要になります。受信感度性能はGPSのチップに依存します。

eTrexhだと衛星の電波取得情報はこんな感じで表示されます。頭上を回っている衛星に番号が付けられ、電波を受信していると四角く塗り潰された状態になります。下側の棒グラフは衛星毎の電波受信強度です。写真では、5つの衛星を捉えており、電波強度が弱いことがわかります。

さて、小雲取谷でのログ比較をしてみます。

eTrexh:緑、iPhone:赤

奥多摩・小雲取谷で実際に取得したログです。iPhone、eTrex共にロストすることなく記録できています。iPhoneは谷では電波を拾ってくれないと思ってましたが、GPS受信感度は予想以上に良いです。

GPS位置精度

上記で受信感度の話をしましたが、もう一つ大切なのは、位置情報の精度です。せっかく電波を受診しても、記録される位置情報の精度が低いと意味が薄れてしまいます。

より多くの衛星より、より強い電波を取得できると、位置精度も高くなります。

eTrexhだとこんな感じで表示されます。上部の四角内に位置精度が表示され、写真の場合7mの誤差範囲の精度であることがわかります。尾根歩きだと、位置精度2mが普通に出ます。

位置情報はチップ性能だけでなく、ソフトウェア性能にも依存する様に思います。

eTrexh:緑、iPhone:赤

同様に小雲取谷のログで評価してみます。eTrexhのログは少し安定しないというかブレがありますが、iPhoneの方はありません。実用上の大差はありませんが、驚いたことにiPhoneの方が精度が高いようです。これには驚きました。まさか専用機より精度が良いとは…

eTrexhはエントリモデルで発売日が2007年という古い機器なので、最新のGARMIN社のGPSはもっと感度も精度も良いと思われます。何の不便もなく使えていたので、上位機種を入手しようとは考えていませんが、スマホに載せたチップ性能がこれ程までとは思いませんでした。時代の進化は凄まじいです。

操作性

eTrexhは地図非搭載に対し、iPhoneが地図搭載なので、直接的な比較は難しいですが、ボタン類と雑感を記載してみます。

左面上から、Up、Down、Enterボタン。右面上から、 Page、Powerボタン。物理ボタンは間違いないです。15年使用していますが、ヘタリもありません。

地図付きGPS(iPhone)は使ってみるとやはり便利です。これまでは大体の位置を地形図で把握しておき、分岐点やここぞという時にマップポインターを使って正確な位置を把握してきましたが、地図付きだとズバリ正確に自分のいる位置がわかり、マップポインターで合わせる手間がなくなります。しかも、iPhoneの薄型サイズがショルダーバッグ内での収まりが良く、快適そのものです。

バッテリー持ち

1番の懸念であるバッテリーの持ちも検証しました。実際に使用してみて、整理するとこんな感じでした。

eTrex:14.0h(単3・2本) ※エネループ使用

iPhone:13.0h(バッテリー100%→0%) ※94% 7:00 → 34% 15:00 より算出

iPhoneのバッテリーは予想以上に減りが遅かったのにびっくりしました。小雲取谷の時は、記録を開始した車止め(八丁橋)から電波がずっと入りませんでしたが、GPSだけだと思った以上に減りません。通信では減りが早く、GPSのみで減りは遅いというのは収穫でした。

モバイルバッテリーはAnker PowerCore 10000を愛用していますが、これだと3回フル充電出来ることを確認しました。縦走では4日コースが多いので、この場合2個持つ必要がありますが、逆に2個持てば十分だというのがわかったので、これで計算が経ちました。

評価

受信感度と位置精度はeTrexhと同等か少し上回っており、バッテリー問題も思った程に深刻でないことがわかりました。しかも、操作性やコンパクトさを考えると今後は代替を積極的に検討していきたいです。逆にeTrexhの良さは、電波強度や捉えているGPS衛星の数を確認できる点があります。これは専用機ならではで、スマホにここまで求めるのは、厳しいかもしれません。

なお、メインとして使うなら、落下防止対策をする必要があると感じました。高い場所や硬い岩盤に落として、破壊してしまうリスクを回避する為です。

こんな感じのイメージで、紐はピンオンリールとかで収縮できるものがコンパクトになり良いかもしれません。

また、前回記事で誤操作の可能性についても触れましたが、今回の小雲取谷では一度も間違ってGPSオフしてしまうことはありませんでした。慣れの問題かもあるかもしれません。

いずれにしろ、スマホのGPS機能は沢でも十分実用的であることがフィールドテストで実証されました。かなり使えそうです。

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