GWも終わり夏の兆しが見えてきていますが、山ではまだ気温が低く、防寒着が必要になります。ここでは、ダウンのタイプと用途の観点から、私なりの選び方を紹介します。
素材の選び方
ダウンとはガチョウやアヒルの羽毛のことを指しますが、ここでは化学繊維のダウン形状のものも含めて話をします。
まず、ダウンと化繊の長所と短所を上げてみます。
長所 | 短所 | |
ダウン | ・暖かい ・軽い ・コンパクトに纏まる | ・雨に弱い ・洗濯に気を使う ・羽毛が飛び出す ・アレルギーになる場合がある |
化繊 | ・雨に強い ・普通に洗濯できる ・繊維が飛び出さない ・アレルギーになりにくい | ・ダウンほど暖かくはない ・ダウンほど軽くない ・ダウンほどコンパクトに纏まららない |
ダウンは動物の羽の為、羽に動物の脂が付いています。これがダウンの暖かさに繋がってるのですが、洗濯により脂が落ちてしまったり、アレルギーの要因にもなっています。実はダウンは洗濯できるのですが、その際は、油分が落ちないようにするダウン専用洗剤を使います。
一方で化繊は繊維に油が付いていないので、洗濯も普通にできるし、アレルギーにもなりづらいです。つまり、扱いが楽です。
また、ダウンは雨に濡れると暖かくなくなってしまいます。これはダウン・ボールが水で纏まってしまい、空気を蓄えることができなくなるからです。しかし、化繊はダウン・ボール的な単位で構成されていない為、水に濡れてもそれ程暖かさが落ちません。
また、ダウンは着ていると、羽毛が縫い目の隙間から飛び出してくることがあります(羽毛布団でもありますよね)。しかし、化繊はこれがありません。羽毛という、羽単位で構成されておらず、極細繊維を絡めてパッド状にしているからだと思います。
ここまではダウンの短所中心の記載になってますが、ダウンの長所も勿論あります。それは、一番重要である暖かさとコンパクトさが優れていること。この2大要素はいまだに化繊は追いつけていません。
昔の化繊は大きくて重く、暖かくありませんでした。しかし、化繊の性能もかなり進化しており、暖かさ・軽さ・コンパクトさはダウンと大して変わらなくなって来ています。こうなってくると、化繊の利便性(扱いの楽さ、雨での強さ)はアウトドアの使用では、強みになるので、是非候補に入れるべきです。
・温かさ・軽さ・コンパクトさ優先ならダウン
・雨の強さ、洗濯のしやすさ、その他利便性を優先するなら化繊
・最近の化繊はダウンに匹敵します。
ダウンジャケット
ダウン量少なめ
ダウンの量は暖かさに直結しますが、少なめの物だと以下の用途になります。
- 街着:オールシーズンでアウター ※1月とか一番寒い時期は少し寒い。
- 山着:冬場はインナー、春〜秋はアウター
暖かさは弱めですが、ダウンが少ない分コンパクトになり、オールシーズン使える汎用性があります。
モンベル U.L.ダウンインナージャケット
重量:200g
モンベル のダウンジャケット。流石にダウンは小さいです。
ド定番の商品だったのですが、廃盤になっていました。後継の近い商品は「スペリオダウンジャケット」です。
ダウン量少なめ(化繊)
パタゴニア ナノパフフーディ
重量:397g プリマロフト60g
パタゴニアの定番ジャケット。プリマロフトという化繊素材を使用しています。フード付きということもありモンベルのダウンより2回りほど大きいです。2012年ドルが80円台の時、海外通販で日本の半値以下で買った記憶があります。
ポケッタブル仕様といって、内ポケットがそのまま収納パックになります。この機能はすごく便利です。重量がカタログ表記より軽いのはサイズがSだからだと思います。
また、ナノパフは、フードなしの「ジャケット」、「プルオーバー」「ベスト」のタイプから選べます。プルオーバーはフードやフロントジップが少ない分、よりコンパクトになります。
化繊の利便性とダウンに近い暖かさの為、山ではオールシーズン、街着としても夏を除く3シーズンずっと使ってます。汚れが気になったら普通に洗濯できるし、コンパクトで温かく、便利すぎて手放せません。ダウンはコンパクトにはなりますが、羽毛の跳ね返りが強い為、キッチリ畳んで空気を抜かないと写真の小ささにはなりません。適当に束ねてザックに入れる場合、ナノパフとの大きさの違いはあまり感じられません。
ダウン量多め(化繊)
- 街着:一番寒い時期の冬のアウター
- 山着:冬のアウター
パタゴニア マイクロパフ・フーデットジャケット
重量:567g プリマロフト100g
ナノパフのプリマロフト量が多いモデルで、今では廃盤となっています。同名の後継品が出てますが、新素材を使ってナノパフより軽くなっています。ピコパフとかにすれば良かったのに不思議です。
2012年海外通販で、ナノパフより安く買えました。これよりプリマロフトの量が多いモデルが、有名なダスパーカー(プリマロフト180g)になります。※これも今は廃盤
この手はビレイジャケットといい、雪山でトップをビレイしている時の防寒として着るジャケットです。この為、アウターやヘルメットの上から着れるようになっていて、少し大振りな作りになっています。
マイクロパフは、ビレイジャケットとしてはかなりコンパクトな部類になります。が、街着ととしては暖かすぎで、本当に寒い時に切る程度です。雪山ではテント泊や長時間停滞する場合に必要となりますが、一般ルートの小屋泊の場合、ダウン量少なめのもので足りてしまいます。行動中は体が発熱するし、小屋に入れば温かい為です。冷えが来るのは、体を動かすのを止めてある程度時間がたった時と知っておいてください(特に就寝した時)。
ダウンパンツ
実はダウン・パンツがオススメな話をしておきます。
通常、登山の最中はダウンは必要ではありません。それは、体を動かしていると、体からの発熱で寒くはなく、むしろ熱い位です。寒くなるのは、歩きはじめや体を動かさなくなる時、つまり休憩中や寝ているときです。そして冷えが回るのは、特に就寝時、下半身のほうがきついような気がしています。
また、私がダウンパンツを推奨する理由として、着る寝袋として位置付けてしまうことです。春と秋なら、シュラフを持たず、薄手のダウン上下を着て、シュラフカバーで寝るのです。シュラフって寝る時しか使用しないので、使用時間効率が低いのです。ダウンジャケット&パンツなら、幕場に着いてから出発するまで、生活着と就寝着を兼ねることができ、寝るときはシュラフカバーで済ますことができるので、実に効率的です。
また、私は極たまに海釣りもするのですが、冬の海釣りにダウンパンツはうってつけです。釣りは手元は動かしていますが、下半身はそんなに動かさないので、下半身がひどく冷える為、これを履くとブルブル震えなくて済みます。
ダウン量少なめ
モンベル U.L.ダウンインナーパンツ
重量:185g
モンベル のダウンジャケット。相変わらずダウンは小さいです。後継の近い商品は「スペリオダウンパンツ」になります。
ダウン量少なめ(化繊)
ナノパフ パンツ
重量:332g プリマロフト60g
お気に入りのナノパフのパンツ版になります。お尻周りは別生地で補強されているのがとても良いです。
総評
嵩比較をするとこんな感じです。
左奥から:パタゴニア マイクロパフ・フーデットジャケット、パタゴニア ナノパフ・フーディー、パタゴニア ナノパフ・パンツ
左手前から:モンベル ダウンジャケット、モンベルダウンパンツ
個人的には、その利便性から化繊が気に入っています。
パタゴニア製品は価格が高いけど、着てみるとその良さが価格以上のものであることを実感します。ちなみに、モンベルの化繊でスペック的に近いものを上げると、下記になります。
- ナノパフ・フーディ → U.L.サーマラップ パーカ
- ナノパフ・パンツ → U.L.サーマラップ パンツ
- マイクロパフ・フーディ→ フラットアイアンパーカ
ちなみに、パタゴニアのプリマロフトの実体験から、素材に対する絶対的信頼感を持ってしまい、自宅の羽毛布団もプリマロフトにしてしまいました。普通に洗濯できるし、それほど高くないし、予想通り実に快適です。
・ダウン少なめのものはオールシーズン使え汎用性がある。
・化繊の技術進化は凄いので、選択肢の一つに。
・私はその利便性から化繊派です。