訪れる山やシーズンによっては、アイゼン(クランポンともいいます)が必要になります。アイゼンは足元が滑らないよう靴に括りつける金属性の爪のことで、冬山の場合は必須装備の一つでもあります。
アイゼンの種類と選び方
まず、アイゼンは軽アイゼンとアイゼンがあり、足裏のカバー域と爪の数が違い、使う場面も異なります。
・アイゼン → 足裏全体、爪10~12本 → 冬山向け
そのうえで、軽アイゼンは足裏のカバー域、爪の数を考慮して選びます。
アイゼンについては、自分の持っている靴とコバ方式を考慮して選びます。
・アイゼン → コバは、なし・後・前後か? → コバ方式の方がズレにくい
価格や大きさ、性能を絡めて表にすると以下のようになります。
以下で細かく説明していきますが、共通して言えるのは、靴に付ける道具である為、靴との相性があることです。お店で選ぶ際はアイゼン付ける靴を持参して、実際にフィッティング(靴底やベルトのフィット感)を試す事が大切です。
ちなみに、アイゼンで有名なメーカーは、グリベル・ペツル・ブラックダイアモンド・カジタックスあたりになります。カジタックスは国内メーカーですが、近年モンベルに事業継承しています。
軽アイゼン(4~10本爪)
軽アイゼンは足裏のどの範囲までカバーする物を選ぶのかが一つの基準です。もちろんカバー範囲が大きい程、滑りにくくはなりますが、荷物として大きくなります。
土踏まずだけカバーするもの、土踏まず周辺をカバーするもの、足裏全体をカバーするもの。また、爪数が増えるほど滑りづらくなります。
軽アイゼンを固定するバンドの扱いやすさも選ぶ際の基準になります。強度を上げる為にチェーンが付いてたり、フィット感を高める為ゴム素材にするなど、各社各モデル色々な工夫があります。
なお、部分的にカバーするものは、以下の3点に注意する必要があります。
- 足裏全体をカバーしてない為、フラットフッティング(ベタ足)で歩く必要がある。
- 勾配のある道は、滑りやすい。
- アイゼンが刺さらない地面ではバランスを崩しやすい。
フラットフッティング
軽アイゼンは爪先と踵に爪がない為、フラットフッティング(べた足)で歩く必要があります。
フラットフッティングは冬山では基本の歩き方ですが、軽登山靴ではソールが曲がる為、つい爪先で蹴り上げ大股になり、踵で着地してしまいがちです(普通の歩き方)。
しかも、ある程度勾配があると、フラットフッティングも難しくなるので、登り下りは非常に滑りやすくなります。この為、勾配のある道では、部分的にしかカバーしてない軽アイゼンはとても滑りやすくなります。
段差問題
もう一つ注意しなくてはいけないのは、段差問題です。アイゼンが刺さるところはいいのですが、岩の上などアイゼンが刺さらないところは、必然的にアイゼンがカバーしてないところとの段差が発生し、バランスを崩しやすくなります。
つまり、軽アイゼンは歩き方に集中しないと、とても滑りやすいです。
夏山で雪渓を横断する時に一時的に着用するとか、低山で凍結した道を歩く為に一時的に着用するなど、使い方が限定されます。一方でコンパクトさでは非常に優れています。
アイゼン(10~12本爪)
固定方法
アイゼンはコバ固定かどうかが一つのポイントです。コバとは爪先と踵の出っ張りのことを指し、ここに金具を引っ掛けてアイゼンを固定します。
この為、自分の靴はコバが付いているか?前コバ付きか?前後コバ付きかで?選べるアイゼンが決まってきます。
ちなみに、後コバ固定をセミワンタッチ式、前後コバ固定をワンタッチ式とも呼んだりします。どのモデルも、最終的にはバンドを使うのでワンタッチというのも若干抵抗があるところではありますが…
コバなしアイゼン | 後ろコバアイゼン(セミワンタッチ式 ) | 前後コバアイゼン(ワンタッチ 式) | |
コバなし靴 | ○ | × | × |
後コバ靴 | ○ | ○ | × |
前後コバ靴 | ○ | ○ | ○ |
表にするとこんな感じです。構造を見てわかる通り、コバがあるとコバなしモデルが選ぶことが可能となります。しかし、コバ固定した方がズレにくさや一体感が圧倒的に優れているので、本格的にやるなら、出来れば前後コバ固定できるものが望ましいです。
また、軽アイゼン以上に靴との相性が大切な為、買う時は自分の靴に実際に付けてみて選ぶことが大切です。冬靴の場合、靴とアイゼンはセットで考えるのが基本です。
爪の形状
縦走用とアイスクライミング用に分かれます。アイスクライミング用は、爪先の爪が氷壁に刺さりやすいようノコギリ状になっています。
材質
クロモリ製とアルミ製が出ており、硬い鉄材であるクロモリ製が標準になります。アルミ製は軽いので、軽量製を重視する場合に使われます。その分、強度はクロモリ製により劣ると思います(爪の摩耗が早い)。
アンチスノープレート
雪面を歩いていると、アイゼンの靴底面に雪がダマのようにくっつきます。この雪が付かないようにするのが、アンチスノープレートです。雪が付くと、重たくなったり、アイゼンの効きに影響を受けます。
各社メーカーで色々な工夫をしています。グリベルのアンチスノープレートは雪が付かないと評判のようです。
自分の場合
軽アイゼン(土踏まずカバー)
土踏まずモデルですが、側面3本×2、真ん中2本の計8本の爪があります。とてもコンパクトです。
装着すると、こんな感じ。
横から。こういう感じで段差問題が発生します。
アイゼン(コバ固定なし)
初めて買った軽アイゼンは、土踏まずのみカバーするモンベルのコンパクト スノースパイクでした。しかし、勾配のある道や段差問題が嫌になり、GOROのブーティエルと合わせる為に購入しました。
アイゼン(前後コバ固定)
フランスの老舗登山用品メーカーであるシモンの製品。ICI石井スポーツで冬靴と一緒に購入しました。
装着すると、こんな感じ。青がカッコいい。
最初はグリベルのオーマチックを第一候補にしていたのですが、選んだ靴(ネパールエボGTX)に1番フィットしたのがシモンでした。グリベルは少し細身で、足裏との一体感は圧倒的にシモンの方が良いように感じました。
横から。これまでのアイゼンと比べると、爪の大きさが全然違います。また、前後コバ固定は全くずれる気配がなく、靴と完全に一体化しています。
比較
左から、コンパクト スノースパイク、スノースパイク10、マカルースピード
コンパクト スノースパイクはとにかく小さいです。
広げたところ。
装置したところ。スノースパイク10は幅が細めであることがわかります。
横から見たところ。スノースパイク10は軽アイゼン寄りの10本爪なので、前爪が短いです。
チェーンスパイク
アイゼンではありませんが、靴に付ける滑り止めとして、チェーンスパイクという選択肢もあります。メリットは、コンパクトさと歩きやすさです。4〜6本爪は歩きづらく、8〜10爪は重すぎという人は、十分ありな選択肢になります。軽アイゼンの爪先踵滑り問題、段差問題もクリアしてくれますが、ピンが高くないので雪が深いところでは適しません。
注意事項も上げておきます。私のGOROのブーティエルは甲周辺の表皮がボロボロに剥げてます。これは、このチェーンスパイクを使った為で、靴と接するチェーンが革の表面を削ってしまった為です。一個一個のチェーンの繋ぎ目が少し尖っているのが、原因と思われます。
ピンソール(沢靴用スパイク)
かなりニッチな製品ですが、ピンソールという沢靴用のアイゼンもあります。ラバーソールに変えてから、今は使っていませんが、フェルトソールを使っている時は必需品の一つでした。
高巻き特に泥壁だと、フェルトソールは土や泥が目詰まりして、ツルンツルンに滑ってしまいます。しかし、これを付けることにより、スパイク効果が出てかなり滑りづらくなります。また、ソールの消耗を減少させる効果もあります。
秀逸なのはそのコンパクトさで、スパイクがこのサイズで持ち歩けるのは驚きです。職人による丁寧な手作りの為、華奢に見えるわりには頑丈で、チェーンが切れたりすることは一回もありませんでした。
昇栄という会社が製造していましたが、ネットで調べてみたら今は販売していないようです。
比較
これまで説明した、アイゼンとのサイズ比較です。
ピンソールの驚異的なコンパクトさが際立ちます。
一方、チェーンスパイクは、そこそこ大きいです。
チェーンスパイクとピンソールを広げたところ。
ゲーター
冬山では定番のゲーターです。チャックだと凍ってしまう可能性がある為、すべてマジックテープ止めの仕様です。デザインもカッコいいです。
ゲーターとは、一言でいうと冬山用のスパッツです。
目的は以下の3つです。
- 雪が靴内に侵入するのを防ぐ
- 足回りの保温
- 足回りの保護
特に特徴的なのは3番目です。アイゼンの爪はとても鋭いので、歩いている時に足首周りに爪を引っ掛けると、ズボンが簡単に引き裂かれてしまいます。これを防ぐ為、ゲーターは極厚の生地を足首周りに備えています。冬靴を履く場合、アイゼンとゲーターはセット品と考えて良いです。