神ソフトのカシミール3Dの記事になります。PC用の電子地図ソフトですが、国土地理院の地形図を扱うことができ、私の登山の記録には欠かせないツールです。
このソフトの凄いところは、多彩な機能を揃えながら、無料で提供されていること。しかも、個人で作成されています。また、サブスクリプションにより高機能なサービス(スーパー地形・山旅倶楽部)も使える様になります。
神ソフトであるカシミール3Dがスマホやタブレットで使えるようになりました。スーパー地形のあまりの素晴らしさに感動し、今回記事にしてみました。このアプリの評価はとても高く、ブラタモリなどの地形マニアの間でも使われているようです。 スー[…]
カシミール3Dとは?
いわるゆるPC用の電子地図ソフトです。
昔はゼンリン電子地図やMapFanなどのソフトを購入して、PCにインストールして使っていたものでしたが、これらと同様の地図ソフトです。Google Mapsの登場により、今ではWEBによるオンライン地図がスタンダードとなっていますが、インストール型でありながら、このソフトはかなり使えます。
その理由と特徴は下記の通りです。
- 国土地理院の地形図を使用できる
- 無料で使える
- GPS連携と編集機能
- 写真のマッピング
- 多彩な地図を利用可能
- 歴史が古く頻繁にアップデートされる
これらの特徴をもう少し詳細に説明していきます。
国土地理院の地形図を使用できる
先に述べた既存の地図ソフトやGoogleMapsは、首都圏地図や道路マップとして使うにはとても便利ですが、登山地図としては使えません。
GoogleMapsも等高線のある地形図を表示することが出来ますが、拡大に弱く国土地理院の地形図と比べると、情報量がとても少ないです。
GoogleMaps(等高線表示)
一番拡大してここまで。これ以上拡大すると等高線が表示されません。
カシミール3D 地理院地図(新版)
同じ縮尺で地理院地図を表示し比較しました。GoogleMapsが20m等高線なのに対し、地理院地図は10mとより詳細であることが分かります。また、地理院地図は、GoogleMapsにはない登山道(点線・実線)が表示されています。
カシミール3D 地理院地図(新版)レベル18
地理院地図は14段階(レベル5~18)の縮尺レベルが提供されており、最大でここまで拡大して表示することができます。ここからさらにカシミール3Dの「ズーム/縮尺」機能で、各レベルごとに0.5~16倍で表示をコントロールすることができます。
これによりルート検討する際、いちいち紙の地形図を本棚から引っ張り出す必要がなくなりました。私は紙の地形図を100枚近く持っている為、望む地図を引っ張り出すのに結構手間どっていたので、これは助かります。
また、いつも山で使用している地形図がPCで見れるようになったので、計画時のイメージと実際の現場でのズレがないのも良い点です。
無料で使える
かなり高機能なのになんと、フリーソフト(無料)です。
また、地図データについても無料です。以前は国土地理院の地図を表示する為には、地域・縮尺毎にダウンロードする必要がありましたが、国土地理院がオンライン閲覧サービスを始めてからはカシミール3Dからもオンラインで参照することができるようになりました。
なお、サブスクリプションにより、スーパー地形・山旅倶楽部というより高品質な地図データを使用することもできます。
GPS連携と編集機能
このソフトの最大の特徴です。先程、国土地理院が地形図をオンラインで閲覧できるなったと書きましたが、閲覧するだけなら国土地理院のWEBからでも見ることが出来ます。しかし、カシミール3Dを使う最大の理由は、多くのGPS機器との連携、そして強力な編集機能を持っている為です。
GARMIN社やSUNTO社など様々なGPS機器のデータ送受信をすることができます。もちろん、iPhoneで取得したトラックやポイントも取り込み可能です。
GPSログを地図に表示させるとこんな感じ。
PCに吸い上げたGPSデータはWindowsのExplorerライクに編集することができ、Windowsの1ファイルとして扱うことができます。私の場合、山行毎にフォルダ分けしてGPSログを格納しています。
ログをダブルクリックすると、その中身が表示され、断面図が表示されると共に、ログの一つ一つを確認することができます。
また、このログの1つ1つを編集することもできます。内容変更はもちろん、削除や新規に追加もできます。GPSは偶に位置情報をロストするので(とんでもない位置を指す)、そういったログは削除します。
ログのある一点をクリックすると、地図上に人マークが現れ(小さくてブログでは見えずらいかも)、地図上のどこにあたるかが分かります。これは凄い便利で、つまり、xxxx年xx月xx日 ○○○ の山行では、yy:yy:yyにここにいたということが可視化されるようになります。もはや完全な登山記録です。以前は、04:30に車止めからスタートし、06:00に大滝を高巻きして、などメモ帳に記録を残していましたが、これをする必要がなくなりました。
しかし、GPS情報(位置情報)以外は残せないので、そのときの感じたことや、出費などの記録の為に、メモは今でも持参しています。
GPS編集機能はとても強力で色々なことができます。例えばこのように1つのルートを別ファイルに書き出すこともできます。ブログに載せている各種山行記録は、これで切り出し、サーバーに上げています。
この自由度の高さが素晴らしく、これまで蓄積してきたGPS情報を色々なソフトやサービスで使えるようになり、自分の資産とすることができます。
写真のマッピング
デジカメ・プラグインという拡張機能を使うのですが、この機能もカシミール3Dを使う最大の理由の一つです。
デジカメで撮影した写真にGPS情報を埋め込むことができ、これを地図上にマッピングさせることができます。
デジカメ写真のEXIF情報には撮影時間が埋め込まれますが、これとGPSログ内の時間を紐付け、緯度経度をデジカメのEXIF情報に書き込んでくれます。
紐づけのイメージはこんな感じ。
実際の操作はこんな感じ。デジカメ・プラグインを起動すると左に画像のフォルダが表示されるので、ファイルを選択して、右クリック「撮影位置を推定する」で、GPS情報を書き込んでくれます。
紐づけが完了し、マッピングした時の見え方はこんな感じ。
画像アイコンをクリックすると、このように拡大表示されます。
GPSログにより、いつ?どこに?いたかを記録として残せるようになりますが、デジカメプラグインを使うことにより、更にそこはどんな景色だったのか?も残せるようになります。
多彩な地図を利用可能
普通の地図ソフトは使用できる地図は1つですが、カシミール3Dは多くの地図を選択&表示することができます。
- 国土地理院地形図
- 解説本地形図
- スーパー地形
- 山旅倶楽部
- 数値地図1/2万5千〜1/20万
- Open Street Map
- 基盤地図情報(標高)
- 数値地図5〜250mメッシュ
- 自作地図
ざっと上げるとこんな感じですが、地図データには無料のものと、有料のものがあります。また、これ以外にも多く対応しており、詳しくはカシミール3DのHPを参照下さい。
カシミール3D解説地図 1/2万5千
1/2万5千、1/5万、1/20万と地形図で一般的に使われる縮尺地図で、とても使いやすいです。使用する為には、後述するカシミール3D解説本を入手する必要があります。
メリットはデータ自体をPCにインストールするので、表示が早いこととオフラインでも使えること。標高に合わせた配色がされていることです。デメリットは、拡大すると画質が落ちること(地図データ自体は画像の為)、1/2万5千データは地域が限定されることです。
地理院地図(新版)
無料なのに14段階ものズームレベルがある為、かなり綺麗に写ります。素晴らしいサービスです。
地理院地図(新版) & 基盤地図情報 5m標高
標高データを重ねると、配色により高低差が分かりやすくなります。無料でこれだけの質の地図を得ることができるのに驚きです。国土地理院のHPより標高データをダウンロードして、「基盤地図情報(標高)プラグイン」を使うことにより、地理院地図(新版)と重ねることができます。
標高データを前面に出しすぎると、高低差はわかりやすくなりますが、それ以外の情報が見えにくくなります。しかし、このソフトの凄いところは、使用目的に合わせ、色合いや濃淡など色々な調整ができます。
歴史が古く頻繁にアップデートされる
1990年代より作成され、改善&機能追加しながら、今でも頻繁にアップデートされています。
長く使うには、ソフトウエアもメンテナンスされている必要があり、時代の流れに追従して行く必要があります。カシミール3Dは新しいGPS機器だと使えなかったり、OSをアップデートしたら使えなくなったとかがありません。また、オンライン地図への対応、スマホの進化に追従(スーパー地形)するなど、これらに見事に対応しています。
個人作成のソフトながら、ここまでやっている作者に感動すら覚えます。
導入パターン
カシミール3Dを導入するパターンを並べると共に、それぞれの特徴を上げてみます。
地図データ | コスト | 地図 | 標高配色 | その他 |
地理院地図 | ◎ | ◎ | △ | 完全無料 |
解説本 | ○ | ○ | ○ | 導入費のみ |
スーパー地形 | △ | ◎ | ◎ | サブスク |
山旅倶楽部 | △ | ◎ | ◎ | サブスク |
ちなみに、これらはどれかしか使えないと言うわけでなく、組み合わせて使うことができます。表示したい地図を選択して切り替えるだけです。私が使い始めたのは、2005年位からですが、最初は導入本から入りました。その頃は、スーパー地形や地理院地図(新版)のサービスが無かった為で、その頃に比べ今は選択肢が増えてかなり導入しやすくなりました。
ちなみに、地理院地図(旧版)は縮尺毎・地域毎の大量の地図データをダウンロードする必要がありました。それでも、これまで1枚1枚本屋で買っていた地形図が無料で手に入ることに歓喜したものです。
地理院地図(新版)
HPより「カシミール3D フリー基本セット」をダウンロードしてインストールします。
特徴は以下となります。
地図データ | 費用 | 地図縮尺 | 標高配色 | 備考 |
地理院地図 | 無料 | 14段階 | 無し |
国土地理院の地図が無料で見れます。しかも、GoogleMapsの様にオンラインで全国表示することができ、縮尺も14段階もあります。
先にも述べた様に、閲覧だけなら国土地理院のHPから見ることができますが、カシミール3Dを使うことにより、GPSデータを貼り付けたり、デジカメプラグインを使って、写真をマッピングすることができる様になります。
プリンターで紙に印刷すれば、山に持ち込むこともできます。また印刷の際、磁北線も自動的に付けることができます。
紙の地形図を買った時の儀式として磁北線引きがありますが、結構手間なので、これは助かります。紙の地形図の扱い方も、機会があれば記事にしようと思います。
解説本
解説本に付属しているDVD-ROMよりインストールします。しかし、アプリのバージョンが古いので、その後HPより「カシミール3D アップデートキット」をダウンロードしてインストールします。
特徴は以下となります。
地図データ | 費用 | 地図縮尺 | 標高配色 | 備考 |
解説本 | 書籍代 | 3段階 | 有り |
カシミール3Dはとても機能が多く、いろいろなことができる為、操作が少し難しい面があります。しかし、これを補ってくれる解説本が販売されており、これによりカシミール3Dの使い方を一通り学ぶことができます。
解説本の良いところは、標高データと共に地図データが付属していることです。標高による配色された地図はとても見やすいです。気をつけたい点は、解説本によって付属している地図データが異なること。どの本も、1/20万分と50mメッシュデータは全国分付属しているようですが、1/2万5千、1/5万データは解説本よって収録されている地域が異なります。
地図データ | 入門編 | GPS編 | パーフェクト編 |
20万 | 全国 | 全国 | 全国 |
5万 | 関東甲信越他 | 名古屋-沖縄 | 東北-北海道 |
2万5千 | 関東甲信越他 | 名古屋-沖縄 | 東北-北海道 |
50mメッシュ | 全国 | 全国 | 全国 |
解説本は結構前に出版されているので、新品だと若干プレミアがついていますが、中古だと安く買えると思います。また、図書館でもDVD付きで借りることができます。
スーパー地形・山旅倶楽部
HPより「カシミール3D スーパー地形セット」または「カシミール3D 山旅倶楽部セット」をダウンロードしてインストールします。
特徴は以下となります。
地図データ | 費用 | 地図縮尺 | 標高配色 | 備考 |
スーパー地形 | 1,680円/年 | 14段階 | 有り | 試用期間あり。 |
山旅倶楽部 | 3,080円/年 | 14段階 | 有り | 試用期間あり。スーパー地形が無償利用可能 |
スーパー地形は素晴らしく良くできています。「スマートフォン用アプリ」を使って、その地図の見やすさと、完成度の高さに感動して、この記事を書くに至った程です。
解説本の地図データも標高で配色されていますが、スーパー地形のデータは半端なくリアルで見やすいのが特徴です。地図はリアルにする程、ゴチャゴチャして見づらくなるものですが、そんなことが全くないのが凄いところです。機能制限なしで3日間の試用ができます。
「スーパー地形」は次回スマホ用アプリと共に記事にしたいと思います。
山旅倶楽部は、最大 1/1万2千の山旅倶楽部専用の地図が入っていたりで、いわゆる全部入りのパッケージです。山旅倶楽部のライセンスがあればスーパー地形も無料で使えます。機能制限なしで5日間の試用ができます。
私の運用
登山の工程の中で、カシミール3Dはどういうシチュエーションで利用しているのか?私の使い方を纏めてみました。
計画段階
過去のGPS記録などを参考にしながら、ルート選定に使います。俯瞰図としても使えるので、ある山域でまだ行っていない場所もパッとわかります。また、地形図がない場合は、紙に印刷しておきます。
私の好きな奥秩父の山域、数々のGPSログがありますが、まだ行けてない沢や山頂がそれなりにあります。
登山時
沢と尾根のどちらを歩くかで、使う地図が異なります。沢は地形図を、尾根歩きは「山と高原地図」を使います。
沢登り・源流釣り
・GARMIN社etrexH
・国土地理院の地形図(1/2万5千)
・マップポインター
沢ではやはり地形図が断然頼りになります。地図が内蔵できるGPSを持つという選択肢もありますが、万が一の電子トラブルと、俯瞰性という意味で紙の地形図を持つようにしています。
一般ルートの尾根歩き
・GARMIN社etrexH
・山と高原地図
山と高原地図は、登山に関する情報量がとても多いので、一般ルートならこれが便利です。しかし、販売されているのは人気のある山域に限定される(約60シリーズ)ので、マイナーな山域やバリエーションルートの時は、やはり地形図を頼ることになります。
帰宅後
・GPSをカシミール3DでPCに保存
・デジカメ写真をPCに保存
・カシミール3Dでデジカメ写真にGPS情報を埋め込み
・遡行の振返り
こんな感じで使っています。
カシミール3Dは、登山のみならず、地質学に興味のある方や鉄道マニアなどにも使われているようで、色々な分野の基本ツールとなる可能性のあるソフトです。また、ここでは紹介していませんが、カシバードという3Dモデリング機能も秀逸です。
あまりに奥の深いソフトなので、機会があれば、詳細な手順の記事も書いてみようかと思います。
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